「DRCが支援 国の将来、私たちの手で ”当事者意識”持つ若者たち」(平成25年1月17日号)

DRCが支援 国の将来、私たちの手で ”当事者意識”持つ若者たち

「私たちがこの国を背負って立つ」――。国政に”当事者意識”を持つ大学生らが団結し、さまざまなテーマで勉強する学生団体「Cubic Argument」(代表・大江弘之東京大院生)の公開勉強会が12月19日、東京都内の文京区民センターで開かれた。テーマは「我が国の情報政策」。ディフェンスリサーチセンター(DRC)の上田愛彦理事長や横山恭三研究委員を交え、参加者らは「政策者と情報官の距離」「日本版国家安全保障会議(NSC)」「情報政策における法制度」などについて議論し、日本の情報政策の問題点を共有した。

「情報政策」めぐり討議

文京区民センターの一室。長机が四角く並べられ、それを取り囲むように30人ほどの青年たちが座っている。大学のゼミのような雰囲気だ。議題は「インテリジェンス(諜報・情報)」について。普段なじみのない話題にもかかわらず、議論に参加する彼らの姿は真剣そのものだ。

インテリジェンス講座(Cubic Argument主催)は大学生や社会人がインテリジェンスについて一から学ぶことを目的としたもので、防衛省所管の財団法人であるDRCの全面支援のもと昨年5月に開講。上田DRC理事長(元陸将)と横山研究委員(元空将)が講師となり、学生たちにインテリジェンスの「いろは」を教えた。

7回目となる今回の講座は、これまでの集大成として一般に公開、同団体の会員を中心に、学生や社会人ら約30人が参加した。大学1、2年生の発表者4人が「ヒューミント(人的諜報活動)」「カウンター・インテリジェンス(防諜)」などのテーマについて発表を行い、議論を盛り上げた。

特に早稲田大1年生の稲吉希理さん(20)の「日本版NSC」構想についての発表は、折しも衆院選で自民党が大勝利を収めた直後だったため、参加者たちの関心を集めた。

稲吉さんは日本版NSCについて「既存の安全保障会議の改編に過ぎず、(有事の際の)判断スピードは変わらないのではないか」「長期的に見れば憲法改正も含めて、(情報政策に関して)根本的にリーダーシップが発揮できる制度というものを作る必要があるのでは」などと指摘した。

上田理事長らはこれらの学生たちの姿を「日本の原動力だ」と評価し、「インテリジェンスは実学。実際に中に入らなければ分からない。しかし、大江さんたちは知識が少ないことを恐れず、学ぼうという姿勢がある。それに我々は動かされたんです」と語った。

Cubic Argumentは「社会に出る前に国のことを同世代でしっかり議論しておこうと思った」と大江弘之さん(26)=東京大法科大学院=によって作られた学生団体。2009年12月に活動を開始した。「安全保障」や「原子力発電」などについて、月1、2回のペースで勉強会を開いている。

「日本の危機とも言える状況下で、若者の中で国を支える集団を作らないと、日本が危ない」との思いから、将来日本を背負って立つ意思を持った若者に学びの場を提供してきた。キーワードは「当事者意識」。国政を自分自身の問題として、リアルに考えることのできる学生を育てたいと大江さんは考えている。

インテリジェンスについて学ぶことで「現実の政治決定の背後には、お題目や理論だけでなく、さまざまな(インテリジェンス的な)駆け引きが存在することが分かる。それこそが国家への当事者意識を持つ若者が兼ね備えていなければならない理解なのです」と大江さんは話す。

今年は「国防」と「原子力発電」のあり方について勉強会を重ねていく予定。一般学生、社会人の参加も可能で、次回の勉強会は1月29日に開催、テーマは「日本版NSCを設立すべきか」。詳細は同団体のHP(http://cubic-argument.org/)に掲載される。    (2013年1月17日付『朝雲』より)

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